日本古来の知恵が詰まった「和紙」を糸に
Oito(おいと)のアイコン的アイテム「Washi Flat」をはじめ、「Urushi Boots」やインソールなどにも使われている「和紙糸」。一般的にはあまり聞き慣れない素材かもしれませんが、Oito(おいと)にとっては欠かすことのできないものです。
今回は、“日本の古き良き知恵を、現代のものづくりに生かす”というコンセプトを持つOito(おいと)が出会った「和紙糸」と、そのベースとなる「和紙」について、どんな特徴を持ち、そして私たちがどんな点に魅かれたのかをご紹介していきます。
<目次>
和紙ってどんなもの?
「和紙」について、「聞いたことはもちろんあるし知ってはいるけど、具体的なことはよくわからないかも…」そんな方も多いのではないでしょうか。ここでは、「和紙」とはいったいどんなものなのか、そしてどのように日本の伝統や歴史とのかかわり、私たちの生活にどう生かされてきたのか、また、どんな素材からできているのかなどについてご説明します。
日本の伝統的な紙「和紙」
まずは「和紙糸」の核ともいえる「和紙」についてご紹介します。
「和紙」と聞いて多くの方が思い浮かべるのは、障子や襖(ふすま)、扇子・うちわ、千代紙、懐紙、書画用紙など日本文化に欠かせない伝統的なもの、もしくは和風のランプシェードや最近人気の御朱印帳などの、和紙を使った製品かもしれませんね。
「和紙」とはその名が示す通り、日本の伝統的な紙のことを指しますが、「和紙」という名前は、明治期に欧米から伝わった「洋紙」と区別するため、それまで国内で作られていた紙のことを「和紙」と呼んだことが始まりだといわれています(それまではただ「紙」と呼ばれていたそう)。
「和紙」は長さのある植物繊維を使い、繊維どうしを絡めているため非常に耐久性に優れており、水にも強いのが特徴です。また天然原料を使っているため表情が豊かで、独特の風合いを楽しむことができます。反面、生産できる量が限られているため大量生産がしづらく、比較的高価でもあります。
一方で「洋紙」は、印刷技術の向上や需要拡大にともなって大量に印刷をするために発展したもので、繊維を細かく砕いた植物由来のパルプを原料に、機械を使って敷き詰めるように製紙します。品質が一定であり、安価、なめらかな書き心地が特徴ですが、耐久性や耐水性には乏しいといえます。
博物館や美術館に所蔵されている奈良時代や平安時代の巻物などにも和紙が使用されており、制作から1000年以上が経った現在でも、その美しい姿を保ち続けています(奈良時代に制作された国宝の巻物を観覧したことがありますが、「これ、本当に千数百年前に作られたものなの⁉」と驚いてしまうくらい非常に状態の良いものでした)。
このように、和紙は非常に丈夫で耐久性・保存性に優れた素材であり、日本の歴史や文化、生活に欠かせないものとして愛され続けているのです。
和紙の素材と現在
もともと日本に自生している楮(こうぞ)や三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)などの植物を原料に手漉きで作られていた和紙ですが、明治以降の環境の変化やライフスタイルの大きな変革とともに職人が減少し、原料の確保も困難になったことなどから、現在では木材パルプなどを原料とし、機械で作られた和紙が多くなっています。
そして、「地球環境にも人にも優しいものづくり」を模索していたOito(おいと)が出会ったのが、和紙を使った糸=「和紙糸」だったのです。さまざまな素材を調べる中で、丈夫さや耐久性、しなやかさなど、知れば知るほど和紙の魅力が深まっていったなかで出会った和紙糸。この素材の良さは和紙を調べていく中で確信へと変わっていきましたが、決定打となったのが、和紙糸が機能性だけでなく環境への配慮も同時に叶えられる素材であるということでした。
密集した立木を間引くことによって木の生育を助けたり、採光性を高めたりし、森や林を健全な状態に保つ「間伐」の際に伐採された木材を「間伐材」といいますが、Oito(おいと)で使用する和紙糸(の和紙)の原料となる木材パルプは、この間伐材の樹皮から作られたもの。建築用としての需要が少ない間伐材をどう活用していくかが課題となっているなかで、間伐材を利用した和紙や和紙糸づくりがこの問題の解決や林業の活性化へとつながる可能性があるのではないか、私たちはそう期待しているのです。
また、もともとの和紙の原料だった楮や三椏は、切っても翌年にはまた同じ長さまで枝が伸びるため、繰り返し原料として使うことができるサスティナビリティに優れた素材だといわれていますが、間伐材を原料にすることも同様に、伝統的かつエシカルなものづくりに通じるものがあるのではないかと考えています。
和紙が「和紙糸」になるまで
では、次にその和紙を素材にして作られる「和紙糸」についてご紹介していきたいと思います。まずは「和紙糸」がどのようにして作られているのかを簡単に解説!工程ごとにわかりやすく、和紙が糸になるまでをたどっていきましょう。
①原料をパルプに加工する
原料となる木材などの植物原料を高温高圧の大きな釜に入れて煮こみ、繊維を取り出します。この繊維を洗浄したりゴミの除去などをしたりして、和紙のもととなるパルプへと加工します。
②和紙のシートを作る
でき上がったパルプをよくほぐして繊維が均等になるように水に溶いたら、これを漉いて和紙に。この時の和紙は非常に大きなシート状になっています。
③スリット状に裁断する
でき上がった和紙のシートを、糸にするための撚りをかけやすいように均一の細い幅で裁断します。
④撚糸する
裁断された和紙に撚りをかけて糸にします。より強度を高めたい場合など、目的に応じて和紙と他の繊維と合わせながら撚りをかけて糸にすることも。
⑤染める
でき上がった和紙糸は白っぽい色味のため、使用する製品のイメージに合わせて色を染めたら完成です!
このようにして出来上がった「和紙糸」を使って、Oitoのニットシューズは作られています。
「和紙糸」ってどんなところがいいの?
「和紙」の良い部分と、「糸」の良い部分をあわせ持つ「和紙糸」は、優れているポイントがたくさん!
例えば、「和紙の耐久性を生かした糸だから丈夫」なことや、「しなやかで摩擦が起こりにくい(=靴擦れが起こりにくい)」こと、「抜群に軽い」こと、「肌当たり・肌なじみがやさしいから疲れにくい」こと、「編むことができるから、理想のシルエットを表現できる」ことなど、履く人へのやさしさと作り手の理想を同時に叶えてくれる要素が詰まっているのです。
そんな中でも春夏に特に嬉しいのが、「蒸れやにおいの悩みを軽減する」ということ。なぜ「和紙糸」が蒸れやにおいのお悩みを軽減できるのか、その性質とともにご紹介します。
蒸れにくさ―「吸水・速乾性」
和紙の原料となる木材や樹皮は、多数の細かい穴を持つ天然の多孔質素材であり、汗などの水分をすっと吸収し、放出する性質を持ちます。さらに繊維と繊維が絡み合うことで隙間ができるため通気性にも優れており、汗をかきやすい春夏にぴったりの履き心地です。上のグラフの通り、吸水・速乾時間が綿と比べて約半分という調査結果(※メーカー調べ)からも、和紙糸の吸水・速乾性の高さがうかがえます。
また、空気を多く含んでいるため、さらさらと清涼感のある肌心地を楽しむことができるのも嬉しいポイントです。
におい悩みを軽減―「抗菌防臭」効果
前述のように、天然の多孔質素材を原料にした和紙を使用している「和紙糸」は、通気性が抜群!だから靴の中で汗などの水分がこもりにくく、また水分を吸収してもすぐに乾くため、においが出にくくなるのも特徴です。
専門機関に依頼した品質管理試験でも「抗菌防臭」の効果は認証済み!さらにその効果は素材由来のため、靴に加工したり時間が経過したりしても変わることなく発揮されるといわれています。
おわりに
「和紙」や「和紙糸」についてご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか?
日本人が古くからその効果を実感し、役立て、培ってきた「和紙」。その魅力は長い年月が経っても色あせることなく、現代の生活にも息づいています。
そんな「和紙」という文化や伝統を受け継いだOito(おいと)の「和紙糸」パンプス=「Washi Flat」で、あなたもこの春夏をストレスフリーな足もとで過ごしてみませんか?
あなたの足もとに、先人たちが生み出し、工夫し、活かしてきた「和紙」という文化や歴史、知恵を。きっと自分の肌で「和紙」の持つ力を実感できるはずです。