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6月のテーマは「雨のち、晴れ」

ご無沙汰しております。OitoのAyaです。6月ももう半ば、みなさんいかがお過ごしですか?

大半の方が憂鬱と感じる梅雨入りですが、気づくと夏がすぐそこまできていますね。ということで、今月は梅雨と梅雨明けからインスピレーションを受け、「雨のち、晴れ」をテーマに選曲しました。雨の曲はノスタルジックで切ない歌詞が多く、日常の心地よさを感じることを目的としたOitoのPlaylistにはそぐわないものも多く、選曲には苦労しました。その一方でジャンルを超えた名曲も多く、雨の持つ悲しさや優しさに世代を超えたアーティストたちの多くが刺激を受けたのだろうと感じました。

そんな雨の日、みなさんはどのように過ごしていますか?

大雨と雷の日に完全防水の長靴でじゃぶんと水たまりに入るのはまるで冒険をしているようでワクワクするし、しとしととした雨の日に傘をレインコートだけで歩いて、雨が落ちる音を肌の近くで体感するのも好きです。あえて防水素材ゆえのムレを我慢するより、思い切って裸足でビーサンやWashi Flatで雨にじゃぶじゃぶ濡れて歩くのも開放感があり好きです。

雨と一言で言っても、さまざまな雨があること、そして雨の日の過ごし方は一様でないことを体現するような、多種多様な曲を年代もジャンルもバラバラな曲を集めてみました。耳と心でさまざまな雨模様を感じ、聞いている間だけでもジメジメ気分が晴れるプレイリストとなれば嬉しいです。

Oito Playlistとは(再掲)

  • 日常の中の心地よさ、自然を感じ季節と共に生きることを大切にしているOitoらしい、季節を感じるポジティブな曲たち
  • 集中が続くとされる「ポモドーロタイマー」にちなんだ25分のプレイリスト。作業やお仕事のお供にどうぞ
  • 歩くスピードにあわせたテンポ、アンダンテの楽曲を選曲。Oitoを履いて、お散歩に出かけたくなるかも

6月の楽曲紹介

Blue Coupe (BPM 65) / Twin Peaks

シカゴ発のバンドTwin Peaksが2018年に発表した曲、「Blue Coupe(青色のクーペ)」には直接的に雨を指す歌詞は出てきません。タイトルのクーペ(車)すら最後の最後まで出てこないのです。一方で、幾重にも丁寧に重ねた音の層…ギター2台のリフ、エコーの効いたピアノ、バイブレーションの効いたベースの音、ボサノヴァのリズムとマラカスの優しい響き…が、しとしとと降る雨とクーペのエンジン音に聞こえてきませんか?

Twin PeaksのベーシストのJackが高校時代に亡くなった友人を想い作成されたこの曲は、星になった「あなた」に語りかけ、地平線を見つめる「僕」の視点から書かれたとてもパーソナルなもの。「目の前にある全てを感じよう」「全ての動きを動こう、グルーブに合わせて」という印象的な歌詞は、雨の日に青色のクーペをドライブし、風景が次々に目の前をすぎさっていく中で、儚い人生を憂いながらも毎日を大切に生きようとする「僕」の気持ちを優しい雨に重ねているかのようです。

It’s Gonna Rain! (BPM 95) / Bonnie Pink

むかーしむかし、とあるアニメのエンディングとして流れていた曲。雨について、こんなにポップで楽しそうに歌っている曲があるなんて、と子供心に印象的だったことを覚えています。ずんどこずんどこと、ジャングルにいるようなドラムのビート、雷鳴=ライオンという表現、「雨なんて大嫌い」と言い切っている子供っぽさが可愛い。

雨が引き寄せ、引き離した男女を歌っているようなのだけれども、「雨は人を呼んだり消したり。誰よりも手ごわいマジシャンね」って、どんなシチュエーションなんだろう?と考えてしまいます。雨脚が強い日に、長靴を履いてじゃぶっと水たまりに入ったり、童心に帰ってはしゃぎたくなるような一曲です。

Aguas De Marco (BPM 72) / Elis Regina, Antonio Carlos Jobim

ボサノヴァといえばこの曲を思い浮かべる方も多い、言わずと知れた名曲。ボサノヴァを聞かない方も、耳にされたことがあるのではないでしょうか。若くして命を落としたブラジルの歌姫、Elis Reginaの声は一音一音が弾けるような生命力に溢れ、Antonio Carlos Jobinの柔らかく掠れた声との掛け合いが心地よい。楽しそうに指をさしたり、踊りながら歌ったり、ElisとTom Jobinの様子がみられるミュージックビデオは、知らないうちにこちらも笑顔になってしまいます。

ブラジルの雨季は3月だから、3月の水(Aguas De Marco)というタイトル。突然降る大雨に、リオの街が水浸しになり、増水した河川や側溝に「木の棒」「石」「ガラス」「切り株」が、とにかくなんでも流れてくる。そうした流れてきたものを単語として繋ぎ合わせただけのシンプルな歌詞の中には「太陽」「寂しさ」や「死」まで…。3月の雨季の後に夏の終わりが訪れるように、水に流されていく「もの」と時に流されていく「人」には、どちらも終着点があることをシンプルな歌詞に込めています。Tom Jobimが「人生には終わりがあるからこそ儚く美しい」と伝えているようにも聞こえます。太陽に照らされた水面のように煌めくElisの声に「人生への約束(ポルトガル版)、心躍るときめき(英語版)」を強く感じずにはいられません。

Stormy Weather (BPM 87) / Etta James

4曲目はEtta Jamesが歌うジャズの名曲「Stormy Weather」。多数の音を重ねた他の曲とは異なり、比較的シンプルなオーケストレーションですが、雷鳴轟く様子をうまく表現したEtta自身のソウルフルな声と泣くようなバイオリンの音、そして雨の音を模したかのようなピアノの四つ打ち音が、雷鳴轟く雨の日をうまく表現しているように思います。歌詞は「彼」が出ていってしまってから毎日が雨と雷の日々、と、雨がやまないことと自身の悲しみが晴れないことをかけています。男女の別れの辛さを描く曲ですが、終盤では「祈り続ければ、きっと晴れて、主が私をまた太陽の下を歩かせてくれるだろう」というゴスペルのような歌詞。

悲しい別れがあるからこそ新しい出会いがあるように、降り続ける雨がめぐみの雨に感じられるのももうすぐかしらと、深い悲しみの先の希望を感じます。雨の日に聞くと、太陽が待ち遠しくなる一曲です。

Singin’ In The Rain (BPM 89) / Jamie Cullum

ミュージカル「雨に唄えば」のタイトルソング、Singin' in the Rainは、様々なアーティストにカバーされるミュージカルの曲ですが、英国出身のシンガーソングライターJamie Cullumの独創的な編曲版をセレクトしました。Jamieは様々な他ジャンルのポップソングを美しいピアノ・ポップ曲に編曲していますが、明るいミュージカルピースが、こんなにしっとりとしたジャズソングに生まれ変わるんだ、と編曲による曲調の変化に驚かされます。

片思いの恋心に酔いしれる主人公が、雨の中で歌って躍ってしまうほどの舞い上がる気持ちを体現した印象的な歌詞。映画の中でジーン・ケリーが傘もささず、大雨の中タップダンスを躍る様子はあまりにも有名ですが、そんなハッピーな歌詞とテンション高い曲調をあえてしっとりと編曲したJamie Cullumのバージョンも是非聞いてみてください。

Small Worlds (BPM 78) / Mac Miller

Oitoのプレイリスト初のヒップホップソングはMac MillerのSmall Worlds。高い音のキーをあえて外すように歌っているMac Millerですが、ピアノもギターもドラムもベースも独学で習得したという天才。14歳でラップを始めるまでは歌手になりたかったそうで、ラップもメロディアスなリリック運びが印象的。このライブ・バージョンでは音をブラさずに歌っているので、スタジオ収録音源はあえてそういうふうに歌うことで、特有の気だるさを表現しているのだと思います(天才!)。

雨が降ると、音が遮断されて、世界に自分一人しかいないような孤独感を感じたりすること、ありませんか?雨について書いた曲の多くが内向的だったり、悲しいものが多いのも納得です。Mac Millerも孤独をテーマにした多くの曲を書いています。私の個人的な解釈ですがこの曲はピッツバーグ郊外で生まれ育ち親や仲間に囲まれ彼にとって「世界が小さく感じられた(Small Worlds)」頃と比べ、大人になり社会的成功を経て、自分の認知する世界がいっきに広がったことによる孤独を著しているのだと思います。雨の直接的な描写はないものの、終盤にある「太陽がもう少しで見えてくる、雲がそろそろ動き出す」という歌詞は、曲中にはずっと雨がふっていたことの暗喩ではないかと思うのです。

また雨の曲の多くにあるように、悲しさや孤独を伝えたまま終わるのではなく、曲の終盤に「そろそろ太陽が出てくる頃。足元のスニーカーばっかじゃなくて、空を見上げろ」という言葉が希望の光の到来と、「大きくなってしまった世界」に向き合わなければならない自身への叱咤激励に聞こえます。

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6月のプレイリスト、いかがでしたでしょうか?悲しさや儚さを感じながらも前向きになれたり、冒険的な曲があったりと、このプレイリストが梅雨時期の空模様に負けずに、みなさまがCozyに過ごす一助になれば嬉しいです。

また来月、お会いしましょう!

Love, Oito

6月 15, 2022 — NakajoAya
タグ: Oito Playlist